1989年2月18日開催IGF第6組
「留学生問題を考える」バズセッション記録

●300人のロータリアンが、28のテーブルに分かれ、それぞれ留学生を囲んで話し合った記録です。
いま、読み返しても、10年以上前の状況が、それほど改善されているとも思えず、依然として示唆に富んでいることに驚かされます。

テーブル1(大阪東RC担当)

学生:蕭 春連(台湾)、劉 暁紅(中国)
リーダー:安原正男(東)
サブ:岩橋貞雄(〃)
記録:大森富夫(〃)
参加ロータリアン:中条弘毅(東)、松下 茂(大淀)、堀江恭男(天満橋)、浅田秀夫(大淀)、榊原正峰(大阪城)、杉村正三郎(淀川)、鶴身小次郎(城東)

留学生の日本観から討論は始まった。明治、大正、昭和生まれの10名のロータリアンを相手に中国・台湾からの2人の女子留学生の質問は相当辛辣なものであった。

まず日本男性の民族的女性差別の問題で、白人女性に対しては相当コンプレックスを持っている一方、東洋人女性に対しては無礼極まりないものであること。次に家庭訪問の際の日本男性の亭主関白ぶりや、妻に対する愛情表現の乏しさなど、外国人女性としての立場から率直な意見を伺うことができた。日本人の働きぶりと余暇の過ごし方に関しては、我々日本人の感じているのと全く一致していた。サラリーマンの年収は今や世界一であるにもかかわらず生活実感は皆無である事、たとえば、パチンコを楽しみ、マージャンをし、仕事帰りには屋台で一杯やるサラリーマンの姿を見るにつけ、何と日本人のレジャーの取り方の貧困なことか。しかし、日本人の企業に対する忠誠心は世界ナンバーワンで、この忠誠心こそが経済大国日本を築きあげたのである。このことはアジア諸国から見て羨望の的で、今後日本が世界にどう貢献していくのか。

また、内需拡大によって欧米並みの社会的インフラストラクチャー(ストック)の建設へ本格的に取り組み始めたことなど、アジアの人々は日本の進路に注目している。留学生問題では、一部の日本語学校のいいかげんな存在や、夜のアルバイトをする留学生など、母国との経済的アンバランスから生じる各種の問題が提起された。私費留学生が経済的困難を乗り越え、日本留学を実りあるものにする為に、ロータリーは何が出来るのかをもっと真剣に考えるべきである。参考までに、2人の女子留学生の一ヶ月収支を記載しておく。

●収入

アルバイト 公的援助 私的援助
劉さん 4万 無し 5万
蕭さん 4万 無し 無し

●支出
食費 学費 家賃 その他
劉さん 3万 年間50万 2万 5千
蕭さん 2.5-3万 年間45万 2.5万 5千

*蒲さんは貯金を下ろして生活費の不足を補っています。

テーブル2(大阪東RC担当)

学生:朱廣興(台湾)、何慶紅(中国)
リーダー:河上英夫(東)
サブ:中村育二郎(〃)
記録:小中義博(〃)
参加ロータリアン:谷垣明生(東)、五鬼上博景(城東)、森廣太郎(大淀)、吉田長三(城東)、伊藤八六(東)、相原功資(城東)、三守博(東)、西尾忠朋(東)

先ず2人の留学生に現在最も困っていることを中心に留学生活の不安や不満について語ってもらった。朱君は、台湾からの留学生で滞日6年半、博士課程で社会言語学を研究中であるが、学位 の取得に大変な年月がかかり、(特に文系の学位には通常10年程度かかる)又その目途も立ちにくく長期の留学生活や将来の生活設計に不安を持っている。又日本での東南アジア系留学生が受ける差別 感や、アパート等の入居の困難さを挙げた。更に米山奨学金が中国にも適用可となった事に喜びながらも、国費留学のシステムの無い台湾からの留学生の分が減らないように訴えた。

何さんは、中国からの留学生で、1年半の間日本語学校で学び、今春大学を受験し、将来は化学を学びたい女子学生だが、現在の保証人は日本語学校在学中のみとなっているため、受験を目前にして経済面 と新しい保証人探しに困惑し不安を訴えた。ロータリアンからの発言は次の様なものであった。
(1)上から見下ろすような態度の日本人は決して多くない。日本人が自分の意見をはっきり言わない事が誤解の基になる。
(2)奉仕には無限と言うことはない。経済面の苦労は常にある。それを乗り越えてゆくのが真の勉強だ。
(3)留学生の問題は深く関われば関わる程難しい問題が一杯出て来る。博士課程に10年間近く掛かり、米山奨学金は2〜3年間のみだ。一般 のロータリアンにこの現実を良く知ってもらい、充実させてゆかないと、人数面でも金額面 でも中途半端になる恐れがある。
(4)今から30年程前、日本から欧米への留学生も大変苦労した。日本への留学生達も挫けず頑張ってほしい。日本人は留学生に対して、概して親切だと思う。台湾や中国の人達に親近感を持っている。
(5)米国の様に、留学卒業後一定期間WORK出来る制度を設けるなどもっと門戸を開く必要がある。
(6)その他、何故保証人が必要なのか?保証人の負担が多すぎて保証人になりにくい制度だ。米国では保証人など必要ない。留学生を受け入れた学校が保証すれば良いのでは。

以上この留学生問題は余りにも多くの問題点を含んでおり、又、国の制度上の問題も多く、短時間では十分な話し合いが出来なかった。然し、直接留学生達の生の声を聞けた事、又我々ロータリアンの意見を聞いてもらった事は非常に有意義であった。

テーブル3(大阪東RC担当)

学生:顧学平(中国)
リーダー:松井弥之助(東)
サブ:村上益一(〃)
記録:辰野光彦(〃)
参加ロータリアン:杉田幸視(淀川)、山野隆一(北淀)、蓑史郎(淀川)、宮本肇(鶴見)、中村孝三郎(東淀)、山根義夫(東)

中国から来て阪大で学ぶ顧学平君は、20人の応募者の中から只一人選ばれた中国政府派遣の留学生で、留学生の中では最も恵まれた環境にあるとの印象を受けた。現在、学費の他に月額7万8千円の支給を受け、奥さんも一緒に来日されて赤ちゃんも出来、3人で生活されているとの事である。生活費の足しにする為に、中国語のアルバイトはされているものの、経済的な面 では特に苦労したことは無いようである。しかも、帰国後の就職についても原則的に本人の自由意志で決定出来るとの事であり、近年の中国政府のリベラルな一面 を垣間見た感がある。

しかし乍ら、勿論留学生としての苦労はあるとの事で、それを一言で言えば「さびしい、もっと親切にして欲しい」――つまり精神的な面 での配慮、或いはアジア人同士としての親密感・友情といったものがもっと欲しい、との事であった。

ロータリアンとしても、単に経済的な援助にとどまらず、種々の会合やホームステイ等をより一層積極的に行い、留学生の良き相談相手となって「心のきずな」を太く短くしてゆく姿勢がなによりも大切であると感じた次第である。

又、顧君に日本人の印象を尋ねたところ、勤勉で規律正しいが、反面少し固さがあり働き過ぎの傾向があるとの事であった。尚、参加したメンバーからは活発な意見発表があったが、主な意見としては、

(1)現在は苦しいかも知れぬが、将来の自国のリーダーたるべく自信と展望を持って欲しい。
(2)国と国の壁を考えず、お互いに信頼し合って友情を育んで欲しい。
(3)苦しい反面、現在の立場は極めて恵まれている点を十分認識して頑張ってほしい。
(4)ロータリアンとしては奉仕の精神に徹して、留学生に対して出来る限りの事を為すべきだ。

等々であった。

テーブル4(大阪東RC担当)

学生: ANAS MIFTAH FAUZI アナス・ミフター・ファウジ(インドネシア)
リーダー:湖崎 克(東)
サブ: 青井 隆(〃)
記録: 若林紀男(〃)
参加ロータリアン:堀野郁三(東淀)、宮岡邁(東)、森脇敏夫(大阪城)、宮阪登(大阪城)、大西淳(平野)、内田頼泰(北淀)、松本昭(東)、梅田文夫(東淀)

留学生のプロフィル:アナス・ミフター・ファウジ、インドネシア、ボゴル出身、1960年生まれ、大阪大学醗酵工学研究室修士過程にて勉強中、テーマは「工場排水処理」で、本年4月で来日2年となる。国からの奨学金は授業料以外に月17万円で、一人の生活費としては、他の留学生よりは恵まれている。帰国をすればボルゴ大学の教官の予定。インドネシアには妻と1女の家族を残す。

アナス君の留写生活での問題点:
(1)日本語学習:来日前2ヵ月、後に6ヵ月学習したが、とても難しくまた日本語の教科書による勉強が充分出来ない。
(2)生活習慣:宗教上の面で食事に困る(豚、ハム、酒がとれない)。寒くて寒冷アレルギーが出る等がある。
(3)大学での学習:まだ語学が不十分なのでもっと手を取って教えてほしい。
(4)研究の継続:今の修士過程は来年3月で終了するが工場排水処理の研究は現在のインドネシアでは非常に重要な課題であるので次の博士過程へ学習と研究を続けたい。その場合、国からの奨学金が続くかの不安があり、しかも家族を呼ぶのは難しい。

テーブルディスカッション:出席の各ロータリアンは、先の多くの問題点についてさらに質疑を重ねることで、アジアからの留学生諸君の悩みや解決すべき点について、認識を深めることが出来、今回のIGFセッションに「留学生問題に、ロータリアンはどう取り組むべきか」をメインテーマに取り上げた意義は大きかったと考えられる。

最後にアナス君へ、奨学金、日本語、生活習慣家族との別れての生活など、困難は多いと思うが貴国にとって重要な課題である。「工場排水処理」の学習と研究をさらに日本で続けられるよう、皆で激励し、ディスカッションを終了した。

テーブル5(大阪東RC担当)

学生:頼高潮(中国)、馮首平(中国)
リーダー:稲本晃(東)
サブ:杉浦嘉功(〃)
記録:新庄洋也(〃)
参加ロータリアン:川内忠脩(北淀)、持田力(大淀)、橋本尚三(大淀)、中真一(東淀)、加藤勉(大阪城)、村上博太郎(淀川)

2人の留学生は、両名ともに中国政府派遣の公費留学生であった。共に出身国が同じという事もあり留学に至る背景等にも共通 項が多いために問題点を紋って討議した。以下ポイントを整理しますと、
(1)派遣留学生の条件としては、留学終了後必ず帰国することが絶対的な条件となっている。その他の条件はほとんど無く、開放経済の進む中国にあって帰国後の職業選択の自由も大幅に認められているとのことです。
(2)勉学への意欲についても、留学生のほとんどが文化大革命を経験しており、一度学生の身分を離れ下放して社会人としての仕事に従事した後に留学生として再度学業に就いているために知識の吸収意欲については大いに学ぶべきものがあります。ただ、学科の選択については留学生自身の興味領域と大学に設置されている講座内容とが一致しない場合もあるので留学生全体から見ると必ずしも満足できないケースもあるとのことです。
(3)勉学と生活の点については、中国からの留学生には既婚者が多いために夫婦共に留学生の身分にある場合には特に問題がないが一方が学業を終了して奨学金の支給がなくなった場合等には生活面 で若干の問題があるように思うとの事です。
(4)まとめ 総体として勉学と生活の両面において留学の目的を達成する上での障害というものは無いと言えます。しかし、米山奨学生に対するロータリアンのケアーについては留学生の目から見ると、経済的な側面 よりもホームステイやアドバイスを通じての精神的な支えになっているという点で、制度の内容に関心を示しています。この点からもロータリーとしては、現在我々で出来ることから始め、一人一人がどれだけ留学生の立ち場に立って考えることが出来るかがポイントになりそうです。

テーブル6(大阪東淀RC担当)

学生:于水(中国)
リーダー:坂本旭(東淀)
サブ:西岡祖秀(〃)
記録:真下豊一(〃)
参加ロータリアン:小池宣之(東)、三浦一明(大阪城)、清水林(大阪城)、喜多村勲佑(北淀)、種田憲次(住吉・ゼネラルリーダー)

種田ゼネラルリーダー臨席の元に、留学生・于水(ウ・スイ)君を囲んで懇談した。于水君は中国大連の出身で、中国の大学を卒業後、大連の商社に勤めていたところ、日本のある会社の社長の招きで留学することになり、関西国際学友会日本語学校で1年3ヶ月勉強し、4月から大阪府立大学の大学院(経営学部)へ入学する予定である。彼は私費留学生であるが、非常に恵まれており、保証人の方にアパート・生活費・学費の全てを援助してもらっている。

しかし、中国からの留学は非常に困難で、不可能と言っても過言でない。その所以は、日本の10万円が中国の貨幣で3600人民元に相当しその額は大学卒のサラリーマンの3年間の所得に当たり、その上中国からの送金は国の政策として出来ず、日本での生活は奨学金やアルバイト・保証人の援助に頼る外に策がない。

彼も恵まれているとは言え、生活費として、毎月3万円を援助してもらっている現状では、大学に入ると現住所の高井田から堺の中百舌迄は定期券も必要だし、不足するのは明らかであり、勉強の暇を見つけてアルバイトをする積りとの事であった。

ロータリークラブの米山財団では中国留学生への奨学金はこの4月より予算の10%が割り当てられる事になった様だが、他のアジア諸国の留学生と違い、国からの送金が出来ないハンディのある以上、余計の援助をしてあげたいのが人情である。干君は日本での自分の環境を幸せに思い、心から感謝しており「いつの日にか恩返しをしたい。」と、決意を述べておりました。

過去の戦争の傷跡のことに触れると、「それは小学校の時から教えられたが、歴史上の事で、そればかりに囚われることなく、もっと前向きに物事を考えたい。それよりも経営学やマーケティング学を勉強し、帰国後、商社に入り日本と貿易したい。」と目を輝かせておりました。

懇談会当日35名の留学生の内、17名が中国の学生であったが、皆が非常に真面目そうで、特に于水君は大変聡明でもありました。

過去において欧米へ留学した日本人学生が愛情を持って迎えられ、我々に欧米への憧れの気持ちを植えつけてくれた様に、この人達に浄財の援助だけでなく、愛を持って接する事が日本を愛する人々になって、国際交流の役割を果 たしてくれる事でしょう。

この真の援助の出来るのがロータリアンであると思います。

テーブル7(大阪東淀RC担当)

学生:林桂南(台湾)
リーダー:藻井泰忠(東淀)
サブ:井上武(東淀)
記録:足立博史(東淀)
参加ロータリアン:森藤鐵治(東)、徳島米三郎(東淀)、番場新一(東)、細川潔(東淀)、坂本一民(天満橋)、安積義夫(東)、高橋衛二(天満橋)

テーブルでは中華民国台湾省台中県出身の留学生林桂南(リン・ケーナン)氏を囲んでセッションを行った。林氏は29才で昨年4月より研修生として大阪大学工学部醗酵工学部に入り、同9月より大学院に入り、後2年間程研究を続けられる予定である。

林氏より困っていることとして述べられたのは第一に日本人学生の友人が出来ないことである。集団主義というか、此方から話しかけていっても全く相手にしてもら之なくて、研究室に於いて話を交わすのは教授一人だけという具合である。第二には阪大留学生会館は2年間しか住むことが出来ず、後の1年間の衣食住を心配しているとのことである。このテーブルのセッションでは時間の大半を第一の点について意見交換がなされ、ロータリアンからは、集団主義という言い方は今の学生には当っておらないが、友人が出来ない理由として、日本人学生には受験競争、学歴社会から来る弊害で、自己中心的で、本当に気の合った2、3人だけで仲間を作る風潮等があるからであって、林氏が悪いのではないという意見が多く出された。(大学の教授も同意見であるとのこと)そして、これも人生の経験であるとか、もっと積極的に日本人に話しかけていってはどうか等の意見も出たが、林氏より他の外国学生(英語を話す)に対しては、日本の学生は何か得ようと親しく話をするのに自分をさけるので困っているとの事である。

この様に問題は日本人学生の考え方にあると思われ、留学生の人達に良い日本の印象を持って帰国してもらうには、もっと大学等に於いて温かい配慮があればと思われるのである。このセッションを通 じて留学生問題の一端に触れることができ、又同時に日本社会の問題の一面をも考えることが出来、大変有意識であった。

テーブル8(大阪東淀RC担当)

学生:朴革(中国)
リーダー:豊島秀治(大阪東淀)
サブ:本出真二(〃)
記録:長洲真(〃)
参加ロータリアン:首藤正己(東淀)、村岡秀雄(東)、浜野勉(東淀)、山田直七(大淀)、石川邦弘(東)、菅本泰助(東淀)、小山雄三(東)

私費留学生とアルバイト

一口に留学生と言っても、
(1)国費による者
(2)奨学金による者
(3)知人・縁者の協力による者
(4)全くの私費による者
とでは事情が顕著に違っていることを知らされた。

我々のテーブルに出席してくれた留学生は「朴革君、29才。中国・吉林省から2年前に来日、現在、大阪大学大学院修士課程で冶金工学を学ぶ好青年」であった。

懇談に先がけての基調講演で、講師の浦野先生から、留学生が等しく直面する問題点として、「学業と生活」との指摘がなされたが将に、そのことを証明するかの如き話(日常生活)を彼は淡々と語ってくれた。

朴君は完全なる私費留学生であり、本国に妻を残しての単身留学生でもある。従って本国からの送金は当てにも出来ないし、貨幣価値の著しく違う日本にあっては無意味に等しい。生活は、畢寛、バイトに頼らざるを得ないのが道理。「月額5万円で全てを賄う」と言う彼の生活のつつましさが偲ばれる。学生にとって最も割りのよい"家庭教師"も彼らには無縁。その彼にとって、教授の斡旋で某企業への実験データの提供から得る報酬が唯一の"生活の支え"だという。

ある時、学内の掲示板で極めて有利なバイトを知り早速申し込んだところ、三日待たされ、結果 、「中国の学生はダメ」との返答であった。不審に思い問いただしたところ、「ココム問題で……」との返事。「授業ではもっと先端的な技術を学んでいるのに…!?」と淋しく笑ったのが印象的であった。

生活を維持するためにはバイトは不可欠、さりとてバイトに時間をかけると学業が疎かになる。「修士課程だけでは不充分なので博士課程に是非残りたいが、両立は殆ど不可能でしょう」と苦し気に語る。留学生を受け入れる以上、そのあり方に、もっと血の通 った方途を準備してやらねば!と、話を聞く間、背筋に冷たいものを感じたのは、私一人だったろうか。

テーブル9(大阪城RC担当)

学生:王賓(中国)
リーダー:岩間悦也(大阪城)
サブ:松本祐次郎(〃)
記録:田中正行(〃)
参加ロータリアン:濱田英雄(城北)、 有山茂(城東)、栗山芳雄(東淀)、目幸等遷(天満橋)、三好三郎丸(天満橋)、古田敬三(大阪・ガバナー)、西村実(東淀)

私たちのテーブルでは、岩間悦也テーブルリーダーの挨拶で始まりました。また、来賓には、古田敬三ガバナーを迎え少々緊張気味でしたが、テーブルリーダーの気配りによりスムースに進めることが出来ました。まず各会員の自己紹介、トップに大阪城RCの松本祐次郎君、古田ガバナー、大阪城東RCの有山茂君、大阪天満橋RC目幸等遷君、大阪東淀RC西村実君、大阪天満橋RC三好三郎丸君、大阪東淀RC栗山芳雄君、大阪城北RC濱田英雄君、大阪城RC田中正行君、最後にメインゲスト留学生の王賓君。

王君は中国は河南省鄭州市出身の27才若き青年です。現在大阪大学文学部に留学中。中国政府からの留学生です。彼は4人家族で母は中国にいらっしゃるとのことです。日本には6年前82年の4月岡山大学に入学今日まで日本文化交流史を勉強していらっしゃいます。日本史に関しては私連日本人よりも詳しいのでこれには触れないことにしました。さて留学について彼が6年前留学した時は百人程度だったそうです。今は1万人が留学しているそうです。王君の場合は大変恵まれた留学生です。日本での生活はそんなに苦にならなかったそうです。留学前に中国で日本語の勉強をしての留学、話すことは苦にならなかったが、ただ物価が高いので大変だとのこと。生活費は中国政府からの援助が月7万円とのこと、中国人にすればハイクラスですが日本では月の家賃代程度ですが現在留学学舎寮に入っているのでさほど苦にならない。どうしても必要な物があれば計画をして買入れするし、また勉強等のアルバイトもしている。日常の生活に関しては周囲の日本人は中国人に対して特別 な扱いで見ているが、日がたつと普通の扱いになる。中には今だに特別な扱いをする人もいるらしい。彼がお願いしたいことは、最初から日本人と同じように扱ってほしい、見てほしいということです。

テーブル10(大阪城東RC担当)

学生:ベ貞烈(韓国)
リーダー:桂知良(城東)
サブ:辻谷弘(〃)
記録:照屋貞夫(〃)
参加ロータリアン:細江重(東淀)、山本三雄(大淀)、武内克郎(大阪城)、後谷富司(城東)、角野隆史(城東)、荒金和郎(鶴見)、佐藤俊一(鶴見)

1.辻谷サプリーダーより進行の説明。
2.桂り一ダー表者の紹介
3.参加ロータリアンの自己紹介
4.べ君の自己紹介及び留学に関する話
・ 来日は出身校韓南大学の姉妹校(香川県)との交換留学生であった。
・ 1年後交換留学生の選考にもれビザを取るのに困ったが、聴講生として取れた。大阪市立大学大学院と米山奨学生に同時に合格した事が最も嬉しかった。
・ 妻を呼び、子供が出来、べ太郎と命名。
・ 大学院では平安朝文学を専攻している。平安朝時代は日韓が親密な時代と考えたからだ。
・ 本国へ帰れば大学で教授になりたい。また、日本の留学生に恩を返したい。
5.懇談内容
・ 留学先を日本に選んだ理由は、韓国で日本諸教育が始まった機会に日本語を専攻したのがきっかけとなった。
・ 日本から母国を見る事が出来たのは大いに勉強になった。
・ 米山奨学金を頂いて、生活に困る事なく勉強が出来大変あり難かった。日本人の給料は高いが、自分としては韓国の方が楽な生活が出来ると思う。
・ 米山奨学金は今年3月で終わる。勉強を続ける為2年間だけでなく、出来れば一定の間(博士終了等)延長してほしい。
6.ロータリアンの所感
・ 来日間もない留学生にとって浦野先生の話しは良く理解できるが、留学生は外国で勉強するものであり、それなりの覚悟をしているはずである。寂しさもまた勉強である。
・ 金銭面よりも留学生と我々日本人が心を通じ合う事が最も重要だと感じた。

テーブル11(大阪城東RC担当)

学生:唐捷(中国)
リーダー:三浦祐直(城東)
サブ:木村昌民(〃)
記録:住吉正敏(〃)
参加ロータリアン:菊池淳(東)、新海研志(大淀)、安藤隆男(鶴見)、上野義治(大淀)、原田秀雄(パストガバナー)、中川舘造(大淀)

私達のテーブルの留学生は、中国出身の唐捷という快活で好感のもてる25才の女性であった。大阪大学理学部在籍、北京の清華大学を卒業し、日本の(セラミック関係の技術や研究)高度な水準に憧れて約9ヶ月前に、私費で来日したとのことだが、短期間で習得した日本語の流暢さには驚きさえ覚えたものである。

彼女は両親から毎月6万円宛、仕送りを受けているものの下宿代、食費、研究費や雑費等の支出のため生活がかなり苦しいのは当然といえよう。が併し何とか頑張って好きな勉強を続けてゆきたいと目を輝かせるのである。尚、研究室では実習等が忙しく、時間的に全く余裕がないのでアルバイトをやることはまず不可能であり、是非、米山奨学生に推薦されたいのだと。そして将来は中国に帰り母国に貢献したいと思ってはいるが今のところ、まだはっきりと決めてはいないとのことである。

「明後日(2月20日)は米山奨学生の選考試験日です」と話していたが、同席の皆さんが一口同音に、「首尾よく難関を突破するように頑張れ」との嬉しい激励に心温まる思いやりを感じたのである。このように縁があって、短時間話し合っただけなのに、この留学生をなんとか応援してあげたいと強く思ったのは私選だけではあるまい。恐らくは、各テーブルのロータリアン方も同席の留学生に対し、内容は違っていても、それぞれに同じようなお気持ちを持たれたものと推察するものである。

勿論、衆知のように留学生をめぐる問題には多岐に亘る複雑な難問が山積しており、形だけの対応で直ちに解決するものではないが、今回のセッションのように、たとえ対象者が唯一人であったとしても誠意を以て、色々な面 について粘り強い話し合いの場を持つことは、心の触れ合いを深め、一人一人の留学生が置かれた立場を理解する上で大きな意義があったものと確信するものである。

テーブル12(大阪城東RC担当)

学生:韓旭(中国)、PASCAL WINCKEL パスカル・ヴィンケル(フランス)
リーダー:堤真澄(城東)
サブ:橋本頼明(〃)
記録:武田嘉造(〃)
参加ロータリアン:細川喜信(城北)、高明貞彦(淀川)、村野康(大淀)、岡本政和(大淀)、安田善方(大淀)、名張隆政(吹田)、森國治(東淀)

留学生問題討議の為11ヶ国在阪7校より35名の留学生と共に382名のロータリアンが参集致しました。大阪城東ロータリーのテーブルには堤真澄テーブルリーダー、橋本サブリーダーが出席し、2名の留学生と懇談し問題点を報告するとともに意見を具申致します。

我々のテーブルには韓旭氏(中国)、パスカル・ヴィンケル氏(仏)2名と質疑応答致しました。韓氏は大連外大にて4年間日本語を学んだ後、大阪市大(経営)に入学され、本国では父親は外科医、母親は日本人という比較的恵まれた留学生ではありましたが、彼より提案された2点は現在の留学生問題を集約している様です。

(1)寮問題
大阪市大には120人程度の留学生がいるが、学生寮無き為、極めて質の悪い住宅に全員がいるので早急に行政の手で解決して欲しい、旨の発言あり。参加来賓・名張隆政氏(留学生問題協議会専門委員・吹田RC)より早急の解決策として会社の寮提供、公営住宅提供等手を打ってはいるが、1,500人程度の留学生が近い将来には、6,000人程度と予想され、今後とも深刻と予想されるとの発言あり。
(2)アルバイト問題留学生の80%が私費留学生であり、その中75%は労働をせざるをえない状態のため、何とか就労の窓口を作って欲しい。出来ればロータリーで協力して欲い。堤リーダーを中心に種々討議の結果 、国際奉仕部門で就職申込み窓口の受皿をロータリーで考えようということで意見一致せしが、会場で発表時間無き為レポート致します。

パスカル・ヴィンケル氏はフランス政府留学生にて大阪大学学生寮に入居され、特に問題点無く、勉学のポイントが日本の投資信託ということで、日本の株式マーケットも世界的と感じました。

テーブル13(大阪城東RC担当)

学生:河允姫(韓国)
リーダー:高木清太郎(城東)
サブ:高橋正信(〃)
記録:東寺徹(〃)
参加ロータリアン:石脇達三(城東)、稲田正伸(北淀)、田原正昭(北淀)、西田恵吉(北淀)、土山勝保(淀川)、徳永篤司(淀川)、浅川正英(天満橋)、平山伜(鶴見)、浦野吉太郎(北・基調講演者)

高木リーダーの提案により、出席者全員に留学生に対して率直な感想を一言ずつ簡潔に書くために紙が配布された。その後、ロータリアンの方より自己紹介に入り、河嬢も自らの経歴を述べた。河さんの紹介並びに留学の目的は次の内容です。

私は河允姫。出身地はソウル、母国の大学では日本語教育学科専攻し、現在大阪市立大学大学院文学研究科に籍をおき、国文学「近世演劇」を学んでいる。日本を留学地に選んだのは、父が日本がこれからますます発展する国だからと奨めてくれたことと、韓国では日本の古典文学の書物が大変少なく万葉集の一部分が翻訳されているのみです。日本に行って沢山の古典文学を学びたかった。また、母国でも日本人のコンサルタントの奥様と大変懇意にしていたので、日本に対して親近感を抱いていた。

来日後、城北ロータリーの奨学金をもらい、ロータリアンの方々に非常に親切にしてもらった。韓国に帰れば、将来大学の先生になり、いつか女性ロータリアンになり、留学生のために奉仕したいと望んでいる。

その後、ロータリアンより一人ずつ河嬢に質問し意見の交換が始まった。日本人をどの様に感じるかという質問に対して、私の父が日本人の会社に勤めているので母国では日本人の友達が沢山いたので理解しているつもりでしたが、日本人の表現には裏と表があり、もっとはっきり言ってほしい。例えば、日本の母親と娘の会話で「勝手にしなさい」と言う言葉は理解出来ない。狡いと思う。韓国ではストレートにものを言う。

最後に、彼女からのお願いとして、奨学金が修学の途上で切れるのは辛い。出来れば、一定の期間「博士課程終了迄」延長してほしい。

ロータリアン所感として:金銭的(物質的)援助も必要だが、留学生と我々日本人とのコミュニケーションを大切にし、精神的安心感を持たせる機会を多く作るべきだと思う。

テーブル14(大阪北淀RC担当)

学生:BONAZZI ANDREA ボナッツィ・アンドレア(イタリア)
リーダー:川内忠斉(北淀)
サブ:中村剛也(〃)
記録:伊藤清一(〃)
参加ロータリアン:大石博雄(北淀)、玉井三貴男(東淀)、横山俊彦(鶴見)、津田圭一(鶴見)、福地悟(鶴見)、束田俊夫(天満橋)、戸田孝(八尾・パストガバナー)

私が担当しましたテーブルではイタリア留学生・ボナッツィ・アンドレアさんをお迎えして交歓会が始まりました。

彼はローマ大学を終了後、イタリアのアソシエーションより派遣され、宗教関係の問題を研究すべく日本に留学、早や4年になるそうです。今現在は大阪市立大学で東洋哲学を専攻しています。アンドレアさんが東洋哲学を選んだのは、彼の専門の西洋哲学との比較探究するためで、其の比較が世界の哲学思想史の深さを認識する事に繋がるそうです。

イタリアでは日本に対する知名度は、一般にはほとんど皆無に等しいようです。日本のイメージはやはり今でもチョンマゲとフジヤマの様です。世界の経済大国も甚だお寒い限りです。日本のロータリアンもヨーロッパヘ行けば、大いに日本の宣伝をしてもらいたいものです。其の様ななかでアンドレアさんのように東洋思想を専攻され、日本をよく知って項く事は大変意義深い事と思います。

大学の教科の中でも古典文学と漢文が大変難しいそうです。

最近のように円高で経済的にも種々と苦しい時また気候風土と生活環境の異なる中で、あと何年かは努力と忍耐の日々がつづく事だろうと思われますが、幸い彼は日本の食生活にもあまり抵抗もないそうです。また日本語を大変流暢に話す事が出来、留学生にとってこの様な有利な立場を大いに活用し、友好の輪を広げられると良いでしょう。海外留学された以上はその責任と義務を果 たすため精進努力し、其の素晴らしい若さとそして知性と教養でもって21世紀をめざして将来のイタリアと日本の密接な国際交流の基礎となることを期待します。

テーブル15(大阪北淀RC担当)

学生:羅東耀(中国)
リーダー:安達研(北淀)
サブ:立川隆蔵(〃)
記録:大道一郎(〃)
参加ロータリアン:山田真三(城北)、野瀬正儀(淀川)、植原敬一(大淀)、堀内清光(北淀)、緒方脩作(淀川)、藤川芳男(東淀)、塚本常明(淀川)

留学生羅東耀君の紹介:1956年3月19日生まれ、32才、中国上海出身、私費留学生、既婚子供無し、1985年単身にて留学、2年後奥さんも留学生として訪日、現在奈良県立短期大学(商業経済を専攻)に在籍。

羅君は大阪市立大学にて社会学を専攻し、博士号を取るべく後3年の勉学期間が必要との事。日本語は上海の復旦大学での専攻が日本文学であり、その後中国友好協会に籍を置き、旅行社のガイド、通 訳などの経験もあり非常に流暢な日本語を話す。

羅君の場合、一番大変なのは生活のようです。夫婦二人の生活費はバイト(中国語の講師)で月10万円、内家賃が2万円とのこと。大変な倹約生活を強いられている様子でした。今までの4年間の間で奨学金を受けたのは、市立大学より月5千円と日本国際交流協会の学習奨励金10ヶ月間で6万円の2回だけ、現在も2件の奨学金を申請中とのことです。

ロータリーについても、中国人留学生がなぜ奨学金の申込が出来ないか判らなかったとの事です。ロータリー奨学金のことで大学の掲示板に貼り出される奨学金募集要綱についても、もっとくわしく説明資料を添付して欲しいとの事。中国人留学生から見れば、ロータリーから奨学金をもらえないのではなく、日本の人達が差別 をしているのでは!等の不信感を持った事もあるとの事です。

ただ、「国籍は自分で選択する事が出来ないのです」と言われた一言に、いろんな意味がこめられていた様に思います。

日本に対しての一番興味をもったのは、日本が世界の中で経済大国になったその理由が知りたかったとのことです。かれの目によれば、日本社会の伝統と文化、そして国民性(勤勉であること、製品一つ見ても大変細やかな所に配慮出来る等)が現在の経済大国につながったのではとの分析でした。

ロータリーに対する要望として、
1.奨学金の支給については各国(東西の区別なく)平等に取り扱ってほしい。
2.ロータリーは資金の援助だけでなく、留学生を対象とした講演会とか、討論会、又は、大阪にある会社訪問、見学等のフリー参加のイベントを企画して頂きたい。大阪を知り日本を知る事が私達の生きた勉強であり、ひいては国際親善にもつながるのではないでしょうかとの話でした。テーブルでは、ロータリーの関係で何か奨学金を受けられる様な手段方法はないものかと論議に終始した感じではありましたが、羅君に対しこれと言った具体的な結論の出ないまま終わりましたが、彼の、「私はまだ恵まれているほうです。周囲にはまだまだ苦労している方が沢山おられます。」と言われた言葉が印象深く残っております。

テーブル16(大阪大淀RC担当)

学生:PHAM TAN HUNG ファン・タン・ファン(ベトナム)
リーダー:和田正昭(大淀)
サブ:北村栄三(〃)
記録:岩本潤三(〃)
参加ロータリアン:小原正郎(東淀)、仲堅勝(北淀)、渡辺生児(北淀)、竹田明弘(東淀)、橋本隆(八尾東)、武尾敬之助(西北・ガバナーノミニー)

このテーブルには、ベトナム・サイゴン出身の留学生、ファン・タン・ファン君(28才)が来席。彼は日本に来て5年になるそうである。いま大阪市立大学で経済学を専攻している。現在、大阪八尾市に住んでいて、祖国が社会主義国家になった時点で、兄弟のみで来日したそうである。日本語はYMCAで習得、世界の経済大国日本で経済学を学ぶことを誇りに思っている。現在の学生生活は大変満足しているそうである。彼の兄は印刷会社に勤め、市営住宅に住んでおり弟の面 倒をみているらしい。

一般に言われている私費留学生問題(学費、生活費、宿舎その他)については、あまり話題に上がらなかった。しかし、ファン 君は、昼は商店にアルバイト、夜はベトナム語を教えており、月5万円程度の収入があり、最近では、アルバイトに時間を取られ満足に勉強できないそうである。(日本人学生も同じだと思うが。)

彼は来年卒業の予定であるが、日本の大学院、又は米国の大学院に進みたいとのこと。但し卒業後は、日本の企業には勤めたいとは思わないそうである。理由は、日本の年功序列。集団主義社会が嫌いだそうで、もっと自分の時間を大切にしたい、もっとのんびり出来る国で生活したいからだそうである。

最終にテーブルの意見としては、ロータリアンは留学生に良き情報提供者になれるのではないか。会員の中には、弁護士、医者、会社経営者が殆とであり、留学生の求める職場の御世話や、難しい法律問題等で困ったときの相談相手が居ることはなによりも心丈夫であり、安心して勉学に励めることでしょう。何れ彼らが母国へ帰るときが来るだろうが、このような世話を受けた留学生は日本に対して良い印象を抱き、帰国するだろう。今日、盛んに国際化を叫ばれている中で、まずは出来ることから進めて行きたいものだ。そして、もっと本当の日本の社会、文化を教えてあげる機会を持ちたいものである。

テーブル17(大阪大淀RC担当)

学生:韓慶軍(中国)
リーダー:茨木晧守(大淀)
サブ:富岡道雄(大淀)
記録:富永正蔵(大淀)
参加ロータリアン:衣斐孝雄(天満橋)、岩田淳一(大淀)、片桐松薫(東)、佐伯英光(北淀)、菅本憲市郎(北淀)、北敏男(北淀)、山中直樹(地区幹事)

私達のテーブルの韓慶軍(ハン・テンシュン)さんは中国吉林省長春市出身の28才で大阪市立大学理学部有機化学研究所の大学院で博士コースに在学する男性留学生です。研究専門分野は制ガン剤の薬品を研究しているようだ。

彼は中国政府から派遣された国費による留学生なので、私費留学生に比べると日本での生活面 は安定している様だ。しかも日本語の言葉の方も留学前に本国で日本人の先生に教えて頂き、まずまず出来る様になってから日本に留学されているようだ。

日本に来て8年間もなるので生活習慣・言葉もかなり熟達しているし、今回のセッションの中で一番問題になっている生活面 での金銭的な苦労も少ない様だ。彼の場合は研究の方で時間が一杯でアルバイト等している暇もなく、総体的に考えて恵まれている留学生の様だ。彼に色々な質問をしても、不満ないし苦情のような物は余り言っておりません。ただ中国政府からの派遣という事で、帰国してから自分の意志があまり通 らない事、研究機器、又設備が最も不安に思っている様だ。

現在大阪市立大学の研究室でも大変親切にしてもらって、学校外でのお付き合いも本音で何でも話し合いが出来るし、自分でも満足しているとの事です。この様な良いコミュニケーションの習慣を本国でも実行してゆきたいそうだ。少量 の酒と食事をしながら和やかに腹を割って相手の立場を尊重しながら話し合いが出来る場を持っている事が、最高のものであると理解している様です。

我々も留学生との懇談を通じて、個々のロータリアンがどう国際交流に奉仕しうるかの結論は出ませんが、問題意識を持つ機会に大いに感謝した次第です。現在、経済大国日本の豊かさの中でお金だけだして留学生を受け入れるだけでは決して彼らの精神面 での援助にならないと思います。心の豊かさが彼らの内面的な悩みを少しでも解きほぐし、勇気づけに役立つ事を心から念じています。その事の大切さを痛感しました。

テーブル18(大阪大淀RC担当)

学生:許秋野(中国)
リーダー:杉村章二(大淀)
サブ:伊藤義弘(大淀)
記録:武富貞敏(大淀)
参加ロータリアン:安保立郎(淀川)、佐野清(八尾)、中野憲城(城東)、小川寛(八尾)、吉田正則(北淀)、五十嵐敏郎(東)

我々の会議メンバーは大阪大淀ロータリークラブの杉村リーダーをはじめとする9名のロータリアン及び中国北京より大阪市立大学経済学部に留学されている許秋野さん(女子学生)である。

会議は、冒頭のリーダー提案によるフリートーキング方式で、なごやかに且つ終始楽しい雰囲気の中に進められた。彼女の両親は、ダムなどの設計に携わっておられる父親と、大学教師をされている母親を持ち、経済的には比較的恵まれた家庭の子女であり、従って自費留学という事である。

色々と質疑が交わされた中、次の二つの問題点が特に討議された。

第一は、中国より日本への留学が色々な要素により極めて困難であること。これは、基調講演でも具体的に話のあった経済的理由によるもの。又、中国政府の留学生に対するパスポートの発給の問題。留学ビザの取得が通 常極めて困難であること等である。

第二には、留学生の精神的負担の問題である。日本に来られている留学生の諸君は、大なり小なりホームシック、言葉の問題、風習の違いなどによる精神的負担を強いられているということである。以上の二つの問題点を解決してゆくためには、それぞれの関係機関の改善を求めるという方向と、また我々のサイドで出来るだけ実現可能な事柄を実施すべきであるという事である。即ち、

1.ロータリーは一部の限られた留学生のみが援助の対象であるが、もっと幅を拡げ一般 留学生をも対象とする方法を検討する事。
2.金銭的な援助のみでなく、ホームステイ的な家族を含めての交流を行う事。
3.国際交流委員会等を通じ、ロータリーでの窓口を統一し、幅広くロータリアンに呼び掛ける方法を検討する事。

結論として、留学生に対し、単に通り一遍の金銭的な援助ではなく、メンタル面での援助が大いに必要である。

テーブル19(大阪城北RC担当)

学生:DILEEP CHANDRALAL(スリランカ) OKEKE OLIVER(ナイジェリア)
リーダー:立山澄夫(城北)
サブ:三輪省吾(〃)
記録:串浦信一(〃)
参加ロータリアン:伊藤嵩(東淀)、中島仁作(東淀)、村上 昭(天満橋)、目幸等遷(天満橋)、横田喜久雄(東淀)、木村五郎(大阪・地区大会委員長)

来賓、役員、会員会わせて366名の出席者のもと、参加留学生35名(女性12名)とテーブルを囲み、昼食・ティータイムを一緒に私達は、立山テーブルリーダー、三輪サブリーダー、串浦記録で、同じテーブルにナイジェリアのオリバー君、スリランカのチャンドララー君でした。

オリバー君は日本に来て2年で、日本語が余り出来ず、私選は英語がカタコトの為もあり充分な会話と迄は行きませんでしたが、オリバー君の話の中に印象深かった事は、現在ナイジェリアで亜鉛鉄板の工場とアパート経営をしている父から仕送りを受けている。日本の奨学金を受けたいが、どうして良いか分からない。ロータリー奨学生となるにはどの様な手続きをすれば良いか、でした。この4月から近畿大学経営学部へ入る事が決まっているとの事でした。

もう一人のチャンドララー君は、高校生の頃より日本語に興味を持ち、勉強し、スリランカの大学卒業後、国費留学生として大阪外人に入学する。そして大阪府大、現在は神戸大学で勉強中です。スリランカは現在も政情不安の為、大学卒業後帰国しても就職先なし、現在日本人女性と結婚して奥様も働いている。自分は英語教師をしている。

チャンドララー君に日本留学の動機を聞いてみた。日本は同じアジアの国で、どうして戦後こんなに伸びたか。またスリランカで非常に日本は人気がある。6年前初めて日本に来た時は、大変西洋化されていて感じが悪かったが、今は好感を持っている(アジア的なものが多く残っているから)。大学卒業後は、日本の企業に就職も考えている。日本の社会は私にとって勉強になる。組織的に行動する点です。

日本の社会の悪い点は「いじめ」問題です。それは学校、企業、団地内においてよく聞きます。日本の食事は味が薄く最初は困った。もっと私達 は日本を理解したいのに、日本の方はヨーロッパ、アメリカばかりに目を向けている。最後に、本日のIGF出席にあたり、国際交流とは自分自身を良く知り、相手の立場に立って、相手の痛みを知って考え、行動すると、お話されていた事を報告致します。

テーブル20(大阪城北RC担当)

学生:朱東平(中国)
リーダー:河原地弘光(城北)、
サブ:西本修身(〃)
記録:向山裕三郎(〃)
参加ロータリアン:小坂憲司(東)、松野隆一(城東)、山本照雄(淀川)、村上白士(城北)、芝川又彦(城北)、木村英一(住吉・基調講演コーディネーター)

私達のテーブルには、中国上海市出身の25才になる朱東平君が座りました。彼は目下、大阪市立大学の博士課程に在籍し、経済政策論を専攻する学生で、我が国の文部省より月額約19万円の奨学金を受けています。留学期間は約5年間であと3年間の勉学期間を残しています。又彼は昨年結婚し、奥様は現在上海市で教鞭を執っておられますが、近いうちに来日されるという事で、現在民間のアパートを借りています。彼は一般 的な自費留学生と異なり、非常に恵まれた部類に属する人で、今日私達が論議の対象とする苦学生とは随分環境の違う人です。従って、多少ニュアンスの異なったフォーラムになりました。

私達のテーブルにはコーデイネーターの木村英一・前大阪市立大学学長も同席され、有意義な内容のある討論をできましたことを感謝いたします。朱君は日本の経済的な成功は世界の奇蹟でありその原因を究明するために来日したと言っている様に、彼の目は主に日本の社会的な仕組みや慣習に向かっているようで、日本の人々は礼儀正しいし真面 目である、又約束を守ると言うことも素晴しいが、立小便をするのはどうか?中国ではありえない、その点警察も含めて日本人は寛容であると。しかし車社会ではやむを得ないのかもしれないと自分にいいきかせる様に言っていたのは印象的であった。

そして生活上の経済的な問題では、自分は文部省の奨学生であるから現在何の不自由もないので友人のことを話すと言う事で語ったのは、お金を恵まれると言うことは嫌である。一番良いのは奨学金であるが、その次はアルバイトである。心の負担が無いのが良い。そうした日本政府や企業等による奨学金援助は、本当に勉強しようとする留学生に与えてほしいと言う事であった。私達が彼らに対して、何かしてあげたいと考えた時に心せねばならない事で、唯直線的に善意をさらけ出す事の愚かしさ、又それを受けねばならない人の屈辱を知る事の大切さを教えられた一言であった。

テーブル21(大阪淀川RC担当)

学生:陳永章(台湾)、呉百財(台湾)
リーダー:平岡公仲(淀川)
サブ:赤坂儀七(〃)
記録:堤俊夫(〃)
参加ロータリアン:迫田昌彦(大阪城)、片桐貞光(淀川)、岸科鎭雄(城北)、平田眞司(淀川)、大社照史(淀川・ロータリー財団増進委員長)

当テーブルではリーダーの平岡公仲氏を中心として、留学生は台湾出身の陳永章、呉百財の両君で、絶えず和やかなムードで有意義な交流ができたことを喜んでいる。

初対面としては、誠に日本でも珍しくなりつつある礼儀正しい好青年で、やはり台湾では礼節が残っていると感じた次第である。

陳君は日本語学校在学中だが、既に大学入試も合格し、又呉君は関西大学在学中で、何れも知人・親類におり下宿代等は要らず、又友人にも恵まれて、円高で苦しいながら、短時日に日本の生活に融け込んでいる様子である。

幸いに、両君共食事については、極く一部どうしても馴染め無いものもあるが、総体に地域の交流の中で日本の良さ、勤勉さ等を学びとっているようであり、且つ日本に好感を持っていることを嬉しく感じる次第である。

話しの中で、日本人の会話の暖昧さのことが出ましたが、これは日本人の長年の生活の知恵で、これも社交の中では、結構潤滑油になっており、郷に入れば郷に従えで、日本人の考え方・習慣等を理解して欲しいと述べた。折角皆さんも留学に来られたのだから、学問は勿論大切ですが、同時に日本の文化・風土のことなども良く学んで帰ってほしい。又我々も他国を知ることに努め、相互に理解の輪を拡げようと述べあって暖かい握手をもって別 れた。

テーブル22(大阪淀川RC担当)

学生: 張麗(中国)
リーダー:林法信(淀川)
サブ:坂口久仁男(〃)
記録:内藤徹男(〃)
参加ロータリアン:中井梅雄(東)、今村周平(東淀)、松川雅典(北淀)、内海浩之(大阪城)、池岡清之(鶴見)、寺杣伊左衛門(天満橋)、佐藤全弘(講演者・大阪市立大学文学部教授)

私達のテーブルは南京出身の張麗さん・34才を迎えた。南京大学で有機化学を学び、有機化学の企業に就職したが、そこから国費留学生として一昨年2月に来日した。大阪府立大学修士課程で(食品添加物の研究)を専攻し、博士課程の進学を希望している。

両親は元公務員。彼女は4人兄弟の長女。次女はコロラド大学で助手を務め、三女は同じ府立大学で半導体の研究を、末弟は大学でコンピューター関連を学び、さらに夫君は現在西ドイツでWHOの事業に参画しているという大変なインテリ一族である。

張さんは堅実な考えかたとゆとりのある性格の持主のようだ。学生というよりは充実した大人であるから、留学生活につきまとう経済的な苦しさも、そういうものだと実に恬淡としている。市川国際奨学財団の援助を含めて10万円。学費が2.5万、家賃2.5万、残り5万円の生活である。理科系には実験があるから、アルバイトの時間の余裕はない。三女の妹さんのもとには次女からアメリカで切り詰めたドルが送られてくる。アメリカの奨学金で日本に留学しているようなものだと張さんは笑っている。「中国人の兄弟の助け合う糸は長いのよ。日本の人はそういうことしないらしい、距離があるね。」とグサリ。「主人が心配して、お金送りましょうかと手紙がくるけど、私、男の人からお金もらわない、イヤなのよ」。「帰ったら、中国の人に日本に留学するのをすすめます。苦しみもあるけど、私とても楽しい。ほんとよ。中国の人のんびり、ダメねえ」

張さんは現在の中国事情もいろいろと話してくれた。ひろがる農薬公害。子供一人の産児制限のためにおきた農業の働き手不足。いびつな人口比率の将来の問題。少数民族と漢民族のバランスなど……。張さんののびやかな知性に魅かれて、話題はひろがっていった。

テーブル23(大阪淀川RC担当)

学生:費文怡(中国)
リーダー:磯田欣二(淀川)
サブ:林武吉(〃)
記録:武田慶之助(〃)
参加ロータリアン:吉岡清輝(東)、橋本雄司(八尾)、中川秀男(天満橋)、吉田八郎(八尾)、蔭山正太郎(城東)、黒田厳之(淀川)

リーダー「風習等日本語で困った事は?」
費文治「一緒にゆきませんか」の言葉は「行かない?」と言うところを、テキストを読むような日本語と言われたし、「考えておきます」は何時までも返事が来ず、スケジュールが駄 目になった。それは大体「ノー」という事だと判ったが、返事だけは欲しいものです。
リーダー「親しい友達はありますか?」
「家庭の主婦が多く、中年以上の人達です。同年代の友人はいません。」
リーダー「体験や生活の中でいままでに困った事は?」
「風呂屋さんで(以前の寮では無かった為)番台は、息子さんが両部屋の真ん中にいて両方が見えるのにはびっくりして帰ってしまった。友達にお婆さんの居る時間を聞いて、その時に利用しました。」
リーダー「日本の好きなところ、嫌いなところを」
「まず礼儀正しいところは好きな点で、足を踏んでも先方から詫びを言われて感動した。あとの方は、カメラを持ってついてきて、もしよろしければ写 真を撮らせてくれと言われ、どう答えてよいか判らず困った事があった。どこの国でもそうだと思うが一。アルバイトでも、留学生は安く、日本語が上手くなれば上げようと言うが、上げてはくれない。皿洗いの様な仕事は誰でも同じであるべきだと思う。特に国際化の為に、アジアの人とも促進をはかるようみんな一つになってやることが大切だと思う。」
吉岡「日本語が見事で、発音も良いので驚いた。1ドル=128円など昨今の日本経済をみて如何」
「戦後の発展は凄ましく、最近の経済は成長をたどっている。個人になるとそんなに豊かでない事はよく判る。物価・交通 費も高いです。
黒田「或る外人は、日本人は批判的に見て誇りと思っていないと語ったが、日本の若者をどう思うか。」
「日本の若者は現実的で、過去を見て不満がある様だ。自分の国に対して余り考えてないみたいだ。」
吉田「日本は自由では世界一の国だと思う。」
「仕事が忙しいからその中で、すべてローンでやっている。敗戦によって焼土の中から起き上がり、又賠償もやって来た。そのことを学んで帰って欲しいと私は思うのです。」

テーブル24(大阪淀川RC担当)

学生:千文奉(韓国)
リーダー:佐藤輝男(淀川)
サブ:蒲原英敏(〃)
記録:石田新造(〃)
参加ロータリアン:田代光男(天満橋)、要信行(大阪城)、松永照男(大淀)、田畑正芳(城東)、松本良淳(東・パストガバナー)、鈴木康平(東淀)、中島康雄(城北)

我々のテーブルには、来日3年7ヶ月、大阪府立大学で労務管理を専攻し、本年4月よりドクターコースに進む韓国人留学生・千文奉君を迎え懇談を進めました。千君は来日3年とは思えない流暢な日本語を話す明るい性格の若者でありました。

先ず最初に、何故留学先を日本にしたかと言う質問に対し、第一には地理的に近いこと、第二に学問の目標を労務管理においた以上その問題の先進国である日本に学びたいとの希望によったとの事でした。しかし千君をはじめ韓国の若者の大多数は留学先の第一希望は米国であるとのことです。

日本よりも何故アメリカかと言う質問に対しては、やはり明るく自由で力強いイメージがアメリカにはあるとのことでした。我が国が経済的には自由世界では相当の地位 にあることと、学問的に又文化的に他の国の若者を引きつける魅力あることとは自らちがうのだなと言う感慨を持ちました。又帰国後の方針については、博士号が大きな効果 があり、出来得れば教壇に立ちたいとのことでした。

日本の生活で特に友人関係についてどうかとの質問に対しては、来日3年以上になるが、未だに所謂「ホンネ」と「タテマエ」の理解にとまどっているとのことでした。今日心からの友人になれたと思ったのに翌日はよそよそしい態度を示され本当の日本人の心が理解出来ず悲しい思いをすることでした。母国韓国の儒教に基づく生活習慣と我が国のそれとのギャップの大きさは我々の想像以上に大きなものがある様に感じた。

最後に若干政治的な問題になりますが、我々が加害者的立場で忘却している先の大戦の傷跡がまだまだ払拭されず、あらゆる面 に残っていることにある種の驚きととまどいを感じました。千君には折角日本で学ぶ機会を持たれたのだから歴史的、文化的な考え方の差を乗り越えて、お互いの良さを理解しあえる様お互い努力し合うことを約束し結論とした次第です。紙面 を借りまして、千君が健康で学問的な所期の目的を達成されます様に心から祈念致します。

テーブル25(大阪鶴見RC担当)

学生:モハメッド・ヘディ・ザヤーニ(チュニジア)
リーダー:阿部成之助(鶴見)
サブ:早川四郎(〃)
記録:内田廣(〃)
参加ロータリアン:村瀬泰司(城北)、中井徹(東)、飯原啓吾(北淀)、山田秀雄(鶴見)、下垣邦彦(鶴見)、高田義兵(天満橋)、高江晃一郎(城北)

私達のテーブルは留学生として、チュニジアのキャソリーンより来日、大阪府立大学で経営学を学んでいるモハメッド・ヘディ・ザヤーニ君を迎えました。27才の直面 目な学生で日本語の読み・書き・話す能力もなかなか立派だったとおもいます。私達日本人はチュニジアという国の位 置、歴史は勿論、現在の国情にも疎いので失礼があってはと、私から、本人の紹介と併せ簡単な同国の国柄をメンバー諸氏に説明、本人との懇談に入りました。

ヘディ君は故国の大学の日本人講師と親しくなったのが縁で日本に関心を持ち、短時間のあいだに急速な社会の近代化、経済発展を遂げた日本の秘密を学ぶべく留学を決意したとのこと。チュニジアは元来フランスを宗主国としていたので同国のエリート学生の大半はヨーロッパ、特にフランスの大学に留学するのが普通 で、遥かな極東・日本に留学するという発想は非凡であり日本人として大変嬉しく思いました。

本国からの送金は日本円にして3万円、当地の国際文化センターでアラビア語を教えるアルバイトで2〜3万円を加え6万円前後が生活の糧、と言う事で非常に苦しい学生生活を送っている様です。彼は日本の物価の高いのが一番悩みと言いながら、日本へ来た事は正解で後悔していないと朗らかに話し感動させられました。

ここで私達が一つショックを受けたのは、彼が日本で学んだ知識を帰国後生かし公職でエリートコースを歩むに当たり日本の大学卒の資格ではなお不充分で、更にフランスに留学一学位 を取る必要があると言った点です。日本の大学の国際的評価が未だその様な程度であるとすれば実に遺憾な事と言わねばなりません。

彼はイスラム教徒ですが、偏狭な信仰が貧しく遅れた社会の近代化を制約している事を充分認識し、日本の宗教に対する無関心と言うか寛容なところをむしろ羨しく思っている様でした。

日本への留学生はアジアからの学生が大部分でアフリカから来ている学生が稀で、友人も余り多くは無いようで、その点かわいそうに思います。そこで私達も此のIGFで同じテーブレレを囲んだ縁を大切にし、今後彼のため日本の友人乃至カウンセラーとして折りにふれ激励していきたいと希っております。

丁度メンバーに医師・弁護士その他色々な職業の方々が揃っている故、何かトラブルがあれば気楽に相談すれば喜んでお役に立つ旨彼に伝えておきました。終始熱心に御討議願った会員諸氏とヘゲイ君に心から謝意を表します。

テーブル26(大阪鶴見RC担当)

学生:マナ・ババ・シュレスタ(ネパール)
リーダー:大内昭男(鶴見)
サブ:小田潤一(〃)
記録:賀屋雅雄(〃)
参加ロータりアン:梶谷俊蔵(淀川)、平林昇(鶴見)、田村賢二郎(天満橋)、岩倉克治(鶴見)、横山眞太郎(淀川)、横山勘光(鶴見)、福岡美彦(淀川)

我々のテーブルにつかれたネパールのマナ・ババ・シュレスタ(女性)さんは、おじさんが日本と貿易をしていた関係で、日本の書物や手紙を小さい時に読み、日本及び日本語に非常に興味を持ちネパール大学に入学した際迷わず第2外国語に日本語を選択しました。しかしそれだけでは飽き足らず、遂に日本への留学を果 たしたのである。

日本では大阪府立大学で財政学を学び、そして福祉について関心を持ち、何故、日本は短期間にこれだけの経済力をつけ、そして福祉を充実さす(ネパールと比べて)ことが出来たのか、それを学んで政治家であるお父さんと共にネパールのために働きたいと考えています。

来日して3年になるシュレスタさんですが、平仮名や片仮名があるのにわざわざ難しい漢字を使う事とか、地元のアジアよりアメリカやヨーロッパを重要視する事とか、日本の若者の大部分は非常に自由すぎ勝手気儘に生活し親孝行を余りしない事とか、色々日本について理解出来ない部分が沢山ある様です。

又日本の生活において、先生との交流はあっても日本の学生との接触が少ない事とか、円高により住宅費や生活費が非常に高く困っている事等、我々が知らないことを流暢な日本語で話してくれました。

最後に我々ロータリアンはただ単にお金や品物を留学生に与えるのではなく、もっと高い視野に立ち、留学生と対話・行動し、彼等が何を望んでいるか、何を欲しているのかをよく見極め、良きパートナーとして又良きアドバイザーとして物心両面 において援助する事が必要であると痛感しました。

テーブル27(大阪鶴見RC担当)

学生:金珠允(韓国)
リーダー:宮浦康児(鶴見)
サブ:音在秀信(〃)
記録:梅谷三郎(〃)
参加ロータリアン:白山鴻鍵(淀川)、村瀬景三(鶴見)、松尾寛(北淀)、木原政和(北淀)、野口幸助(天満橋)、内田吉穂(鶴見)

1.韓国の済州大学の経営学部(4年)を卒業してから留学。
2.留学の動機は、近い隣の国であり、韓国の会社に接する機会もあったことと知り合いの人から経営学を勉強するのならば日本に留学しなさいとすすめられて留学する事になった。
3.日本に来て困ったことは、環境の違った事。はじめて来たときは、言葉などその他困ったことがあったが、いまは余り無い。
4.言葉・経済的なこと以外で困ったことは勉強です。
5.現在、大阪府立大学大学院の研究生で、マスターコースで、修業年限は2年の予定です。労務管理を専攻している。
6.労務管理を選んだ理由は、現在の韓国の企業の労使関係についてみると、日本から入ってきた物であるから将来韓国に帰ってからは会社に入ってこの様な分野がないのでこれをやりたい。
7.将来住むのはやはり私の国(韓国)です。
8.現在日本の友達は無い。
9.現在は下宿生活。昔日本へ来たおじいさん、おばあさんの家に部屋を借りている。
10.留学生間の付き合いは、他の留学生とは良く付き合っている。言葉は、半分は日本語、半分は韓国語。話がはずむと自国語だけになる。
11.韓国に於ける他国への留学熱はさかんであり、アメリカ・ドイツ・イギリス等欧米が多い。
12.奨学金については、今申し込んでいる。30名申し込んでいる人がいて12名なので約3分の一の競争率。
13.日本の人と話す場合、年をとった人(我々の様な年輩者)の方が話し易いか、若者の方が話し易いかの質問については、若者とは話し難い、年とった人の方が話し易いとのこと。
14.習慣などで気付いたことは、日本の人は神社の前でよく手を合わすこと、祭りなど日本には多いと思う。
15.結婚したら親と住むかとの問いには、住む方が良い。住むと思う。
16.日本の食事はとの問いには、油濃いものは困る。昼はカレーライスなどを食べている。下宿では自分で作っている。
17.医療について、留学生の健康保険証があり2割自己負担である。
18.姉妹は、姉は結婚しており、兄も然りで金星企業へ勤めている。弟は大学3年生でバイオリンをやっている。
19.制約がなければ何処へ行きたいかと言うとオーストラリア。
20.日本に来て一番良かった事は、いろいろの人と知り合える機会を得て、色々の人と付き合えたことが一番良かった。

以上の様な感想・意見があり、色々と楽しい語り合いの一時を持つことが出来ました。

テーブル28(大阪鶴見RC担当)

学生:孫慧春(中国)、魏栢良(韓国)
リーダー:高橋正明(鶴見)
サブ:斉藤純一(〃)
記録:藤井勝美(〃)
参加ロータリアン:村上淳(東)、比佐禎史(鶴見)、新谷善典(東)、井上幾夫(淀川)、赤井喜代蔵(東淀)

留学生は魏栢良(男)大阪市立大学生と孫慧春(女)関西国際学友会日本語学校生で、韓国と中国からの2名の学生を囲みそれぞれの現況、希望など1時間に亘りセッションをしました。その結論をとりまとめ報告致します。

1.まず2名とも金銭援助は一時的なもので勿論感謝に堪えませんが、やはり人間相互の交流が最も大事なことであります。日本の風俗や習慣等については殆どの学生が無知な状態で日本に来るもので、従ってすべての学生が対話交流や人間交流を欲しがっています。即ち日本人が学生のカウンセラーになってあげることです。どんな小さな事でも親身になって相談に応じることが学生にとって如何に精神的な援助になるか、ただ金銭援助のみでは恵みを受けた単なる感情しかないのではないか。
2..次に学生の日本留学に際しての保証人問題であります。先ず保証人が学生に対して金銭援助が出来る間は良いのですが、保証人の内情等によりそれが不可能になった場合はどうなるか。余儀なく帰国という事態が生じて来ます。これが学生にとって一番不安な点です。本席の女子学生は3月で援助が打切りになる見込みで心配でたまらず苦心しています。またその他学生と保証人とのあいだのいろいろなトラブルが生じているのが多く、これらの問題についても親身になって相談に応じ、学生が安心して勉学に精励できるようにすることを痛感しました。
3.つぎに殆どの学生が苦しんでいるのは、日本の住宅費が余りにも高いことです。学生の支払い能力からしては月額3万円前後が限度のようです。学生対象の安い家賃の建物を何らかの方法で提供することも援助の一つとして考えることも必要ではないかと。

以上とりまとめてみましたが、現在の在日留学生に十分に勉強をしてもらうには、やはり物質的なこも大切ですが、やはり人間的な交流・精神的な援助も学生は心から望んでいることを痛感しました。